本日、職務発明制度に関する調査研究委員会 第12回委員会 議事概要が公開されました。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/syokumu_hatsumei_12gaiyou.htm
○職務発明制度に関する運用上の問題はないと回答した企業は約4割であることから、圧倒的多数の企業で運用上の問題が発生しているとまではいえないのではないか。また、運用上の問題があると回答した約6割について、その理由を見ると、特許法第35条第4項に係る手続負担があげられており、その点については理解できる。
○年間特許出願件数の多い企業ほど職務発明に関する運用上の問題を抱えている可能性が高く、出願件数の多い企業と少ない企業を同列に論じることは必ずしも妥当ではないのではないか。出願件数規模別での分析が有用ではないか。
○職務発明に関する報奨金が、研究者の発明へのインセンティヴを向上させている、もしくはどちらかといえば向上させていると回答した企業が約75パーセントであるが、報奨金を実際に受け取った研究者のインセンティヴが向上しているとしても、報奨金を受け取っていない研究者や研究者以外のチームメンバーのインセンティヴが向上していると言えるのかについては、疑問である。
○組織がイノベーションを目指して研究開発を進める際に重要な要素として、研究開発組織のチームワークの良さよりも、研究者・技術者個人の能力の高さを挙げる企業の方が多かったという点は、参考になる結果ではないか。
○職務発明の取扱いに関して、発明者との間でトラブルになった経験がある企業は数パーセント程度であり、比較的少ないように感じられる。
上記の議事概要を読む限り、多くの会社で職務発明に関するトラブルはあまり生じておらず、優れた発明をした者に、一定の金銭的インセンティブを与えることは、ほぼ合意が取れていると言えます。
私がエンジニアで発明者として仕事をしていたのは、ちょうど中村修二さんの地裁判決(604億円)が出る前まででしたが、その頃でも発明者に一定の金銭的インセンティブを与えることについて、社内で異議を唱える方はあまりいませんでした。
職務発明の対価として、何億円も支払う必要はないでしょうが、優れた発明をした方へ年収1年分程度のボーナスを払ったとしても、不公平だという従業員はあまりいない気がします。
それに経営者でも、その程度の追加費用で、発明者の士気が上がり、会社の業績向上に繋がるとすれば、安いものという感覚の方が多いのではと推測します。
半年ほど前、経団連や製薬工業会の方が、職務発明は会社の業務で生まれるものだから、自動車の生産業務と同じで、本来的に対価は必要ないということを、声高に主張していました。
しかしアンケートにより、声の大きな方の意見が、決して多数ではないことが証明されました。上記のような発言をした者には、猛省してもらいたい。
発明は個人の創作・創意工夫能力の発揮という側面が強く、会社の設備を与えられれば出来るというものではありません。