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特許異議の申立てに関する誤解

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弊所でも特許異議の申立てやそのための公知例調査のご依頼が増えてきました。

この三連休は、弁理士会のe-ラーニグシステムで、特許庁職員による異議申立ての研修を受講し、再確認も行いました。

 

ところで最近、弁理士の方々が、異議申立ての成功件数は極めて少ない、その統計もないという誤った情報を書かれています。

 

出願手続きと違って、異議申立てや無効審判を扱う機会が少ないことが原因とは思いますが、誤解があると思われる点について、解説したと思います。

 

1.特許異議の申立て復活から半年

⇒特許異議の申立ては平成26年改正で復活しました。施行日は平成27年4月1日ですので、復活してまもなく2年になります。

まあ、これは説明するまでもないでしょう。

 

2.特許異議申立ての統計情報はない。

⇒毎月の特許出願等統計速報に異議申立て件数も公表されています。

https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/syutugan_toukei_sokuho.htm

 

また、取消理由が通知された割合は、以下であると発表されていました。なお、現在は元情報の特許庁ホームページ(特許異議の申立ての件数が1000件を超えました)は消去されています。

http://ameblo.jp/123search/entry-12187437750.html

http://www.jpo.go.jp/seido/shinpan/igi_moushitate_1000ken.htm

ファーストアクションの割合(平成28年6月30日までの審理実績に基づくもの)

ファーストアクション

割合

維持決定(即維持)

28.8 %

取消理由通知

71.2 %

 

手続の進行上、現時点では最終処分に至った事件数が少ないため、最終処分(決定)の割合は示していません。

 [更新日 2016年8月5日]

 

IPC(技術分野)ごとの申し立て件数は以下になります。

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/igi_moushitate_ryuuiten.htm

1. 特許異議の申立ての状況(申立日が平成28年8月1日までのもの)(new!)

合計 1001件(権利単位※)

<IPC別 内訳>

  • Aセクション(生活必需品)202件
  • Bセクション(処理操作;運輸)171件
  • Cセクション(化学;冶金)295件
  • Dセクション(繊維;紙)32件
  • Eセクション(固定構造物)22件
  • Fセクション(機械工学;照明;加熱;武器;爆破)44件
  • Gセクション(物理学)102件
  • Hセクション(電気)133件

 

3.特許異議の申立て件数は低迷しており、アメリカのIPRに比べて非常に少ない。

⇒上記の通り、異議申し立て件数は1000件を超えました。

また、特許出願等統計速報を見ればわかる通り、最近は月100件を超えるペースです。

 

IPRはアメリカの無効審判に相当する手続ですが、開始から2年間で2000件程度だったそうです。そうすると、日本の異議申立てとIPRの件数は同程度ということになります。

 

ちなみに、アメリカの異議申立て制度であるPGRは、有効出願日が2013年3月16日以降に限られ、費用の高さもあり利用が低迷しています。

 

なお、我が国の異議や無効審判では、なかなか特許が潰れないという声を聞くこともあります。

 

しかし、USPTO審査官は移民などを大量に採用し、次々と退職者が出る仕組みです。

一方わが国では、国家公務員試験に合格した者を審査官に、一定の研究開発経験を有する者を任期付き審査官として採用するシステムです。審査官のバックグラウンドは日米で大きく異なります。

審査の瑕疵が少ないのはどちらの国なのか、明らかでしょう。

 

そして、特許を無効にしたいのであれば、新規性を否定する文献を見つかるか、実質的に同一の文献で進歩性なしの主張すべきです。手続きや主張の巧拙よりも、サーチの質が問われると言えるでしょう。


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