おはようございます。
今日公開された「特許法第35条改正に向けた取り組み(下)」を読んでみました。
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20130809.html
なるほど、以下の意見については耳を傾ける必要があると感じました。
「発明者以外の従業員からすれば、なぜ発明者だけが特別の対価を得られるのかという気持ちになり、不平等感を持つのです。多くの企業で少しずつこうした不平等感を持つグループが生まれているのではないかと思います。」
しかし、これは特許法35条が悪いのではなく、取るに足らない発明、日常業務の延長にある発明に、10万円、100万円単位の対価を支払っている、企業の運用がまずいのではないでしょうか。
仲間内で不公平感があるから、職務発明は全て法人帰属にすべきというのは論理的・理性的ではなく、かなりの飛躍があるように思います。良い発明は誰でも出来るものではありません。
職務発明を法人帰属にしたところで、従業者の処遇が十分でなければ、人材流出や労働訴訟につながるので、問題の解決にはならないでしょう。
仮に、発明対価を個々の契約で取り決めるとしても、契約が公序良俗に反していたり、著しく不平等なものであれば、訴訟リスクは残ります。現行の35条5項と大差ありません。
35条を改正すれば、訴訟リスクがなくなる訳ではないのです。
それにしても、話にならない意見を言う方もいて、がっかりします。
「例えば、生産ラインで車を作っている労働者が完成した車の所有権を主張できるでしょうか。完成した車は労働者のものではありません。労働者は労働を提供し、給与を得ています。労働の中で生産された車は当然企業の所有になります。労働の中で生まれたものが、車なのか職務発明なのかの違いだけです。」
⇒自動車という有体物と、アイディアという無体物を混同した議論で、聞くに堪えません。
この方は弁理士のようですが、弁理士試験を再受験されると良いのでは。
「前回の法改正は、オリンパス判決で、経営の裁量を否定された先に法外な対価請求が起こることを危惧した故でした。しかし、結果的には法改正の方向性が決まった後に、想像した以上の驚くべき中村判決が出てきました。」
⇒200億円の中村判決は結局確定せず、先例的価値はありませんが...
法律を全然理解していないのですね。
現行法で特段の問題は生じていないのに、法律を理解していない方が、法改正前の中村地裁判決や味の素訴訟などに怯えて、びくびくしているようにしか見えません。