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職務発明裁判集II

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こんばんは。以下、職務発明に関する新刊です。
書籍の解説にもある通り、タイムリーな内容です。
他に「I」に相当する書籍もあります。

職務発明裁判集II/太陽書房

¥2,625

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職務発明における「相当の対価」請求訴訟について、各裁判事例を一連の流れとして整理した。

本書では、「職務発明裁判集 I」に収録した後の2011年9月以降に公表等された新たな一審判決及び上訴判決等を載録した。

上訴判決等については、事件の全体経過を見通せるように、下級審での判決内容も併せて示した。

企業法務の担当者と発明者の双方に役立ててもらえることを目指した。
2005年施行の特許法35条改正後の新法においても、対価に関する社内規定が不合理な場合には裁判所が「相当の対価」を算出する仕組みが維持されたため、使用者側の訴訟リスクが残り、イノベーションの足かせとなるなどの意見がなされ、2012年12月には「産業横断 職務発明制度フォーラム」が開催されなど、職務発明制度の在り方が本格的に議論されるに至っている。

このような中で、職務発明制度について、特許庁や政府の知的財産戦略本部において、所謂「法人発明」の検討が本格的に検討されることとなった。

本書がこのような流れの背景等を読み解く一助となれば本望である。


職務発明裁判集/太陽書房
¥3,675
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職務発明の法改正については、色々と報道されていますが、誤解も多いように思います。

現在も従業員がした職務発明に関する特許権は、予約承継等により、ほとんどが法人に帰属しており、発明の法人帰属が焦点ではありません。


以下の知財協の意見書にもあるように、企画、設計、テスト、製造、販売という流れの中で、設計者が発明者となり、設計者だけ多くの報酬をもらうのは、公平に欠けるとのことです。

http://ameblo.jp/123search/entry-11509259706.html


しかし、一般的な製品開発の場合は発明者の対価を減らせば済む話です。

基礎研究などパイオニア発明についても同様の扱いをすれば、退職者が増えて技術流出につながるのでは思います。


現行法の平成16年改正法でも、職務発明の対価は第35条4項で、

「契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。 」

と規定されており、パイオニア発明と製品開発の発明対価を変えることは可能です。


ですから、平成16年に改正された第35条を再度改正しなくても、発明の対価については、現行法で十分対応できます。

そして、以下の第5項については、職務発明の契約等が十分でない中小企業等のために、残すべきでしょう。

「前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。 」


なお、現在も職務発明の対価に関する訴訟が続いているという報道もありますが、ほぼ全てが平成16年改正法適用前の職務発明事件です。


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