おはようございます。
以下、経営学者の先生による興味深い考察です。
クロスライセンスのための10,000件の特許より、絶対使える100件を持つことが重要とのことです。確かにその通りと思います。
ただ、知財の専門家でない方が良く誤解しているのは、特許出願して公開されると、外国へ技術が流出するという話です。
確かに、日本で特許を取得しても、外国で特許を取らなければ、その国で独占排他権を取得することはできません。特許出願により技術が外国にも知られ、かつその国では差止等の権利行使ができないことになります。
しかし、自社が実施する予定の技術を公開しておかないと、他社に特許を押さえられる可能性が高まります。特許出願や論文発表をしないことで、そのようなリスクが高まる点を指摘する方は、極めて少ないです。
先使用権の制度がある国も少なくありませんが、日本で実施やその準備をしていても、外国で実施等をしていなければ、その国では先使用権が認められません。
防衛をしておかないと、使える100件の特許を持つどころか、ライバルに使える特許100件を取得されることに成り兼ねません。
オープン・クローズ戦略を声高に主張する方の大半は、ライバルに重要な特許を取得されないようにする、防衛という観点が抜けて落ちており、非常に危険だと感じます。
http://www.mugendai-web.jp/archives/1573
例えば、日本企業は旺盛に研究開発をしているため、特許の数は多いのですが、国内だけで出願しているケースが大半です。これも、外国企業とクロスライセンスに持ち込むことが目的だったためです。しかし、特許は各国の国内法であり、特許権を行使したい国で特許取得しない限り、権利行使できません。日本国内だけで特許権を取得することは、海外での権利行使の点から言えば全く意味がありません。むしろ逆に、海外に技術情報を漏出させる結果を招いています。
今後の日本企業にとっては、先進国型の特許戦略が重要となります。つまり、特許数よりも相手を差し止めるための特許をしっかり持つことが大切です。クロスライセンスのための10,000件の特許より、絶対使える100件を持つことが重要です。
http://www.mugendai-web.jp/archives/1575
仕組みを作る人と、仕組みの中でうまくやれる人は、根本的にスキル・セットが異なります。また、考え方も違います。今求められているような「本社機能を強くする人材」は、仕組みを作る人の方です。しかし、典型的な日本企業の組織では、「仕組みの中でうまくやれる人」が抜擢されることが多いように思います。
日本企業の中で作れないのならば、外から採れば良いじゃないか、という話もあると思います。それはそのとおりですが、そのためにはもう少し雇用の流動性があった方が良いと思います。
本当に日本企業の中で、仕組みを作る人は育たないのでしょうか。
これは違うと思います。日本企業の中でも、仕組みを作る人が伸びる場所があります。それは、海外拠点です。現地子会社の経営は、クリアでない混沌とした情報の中で、それでも意思決定をしていかなくてはいけない、という難しいものです。いわば人材の道場になっています。
ここで生き残った人材を、本社機能を担う人材としてどう使っていくのかに今後の日本企業の方向性があるように思います。