こんばんは。日曜日の夜なので、少し書くのに時間のかかるテーマを選びました。
ご存じの方もおられるかもしれませんが、今度の弁理士法改正で試験制度が変更される可能性があり、その中には口述試験を廃止する案もあるそうです。
あくまで案ですが、短答式試験を6時間120問とし、選択科目も短答式に組み入れる方式が、以下の知的財産研究所報告書に記載されています。
この委員の中には、口述試験の廃止を提案する方もいます。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2012_03.pdf
現行の口述試験は、短答式試験のように細かな知識を問う出題になっており、同じような試験を再度課す必要があるのか、という意見があるのも確かです。また、問題や試験官が異なることによる不公平感を指摘する声もあります。
ただ、付記試験でも不合格となる答案は、誰が見てもそうであるという話を聞きますが、口述試験でも運悪く不合格になる方もいるでしょうが、多くの方は誰が見ても...という状況のようです。自分の口述模試試験官の経験からも、不合格になる方は、10分話せばだいたいわかります。
いずれにせよ、弁理士として活躍するには、知識面も含めて、審査官や顧客と円滑なコミュニケーションを取れることが必須です。そのため、口述試験は細かな知識ではなく、コミュニケーション能力を図る試験として残すべきだと、私も思っています。
ただ、司法試験のように口述試験の廃止が避けられなくなる可能性もあります。この場合には実務修習で、司法修習と同じく不適格者を不合格にできる制度にする必要があると感じます。
なお、上記はあくまで私個人の意見です。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2012_03.pdf
③ 他士業における口述試験の廃止理由司法試験における口述試験の廃止理由は以下のように説明されている。
口述試験は受験者の口頭表現能力等を問い得るなどの長所が認められるものの、新司法試験との関係では次のような問題点が存する。
(a) 法科大学院において、双方向的な教育が実施され、厳格な成績評価等も行われることに加え、司法修習過程においても不適格者をチェックすることが可能であるから、口述試験まで実施する必要性があるのか、との疑問が生じ得る。
(b) 新司法試験においては、現行司法試験よりも論文式試験合格者が多数に上ることが見込まれることから、口述試験を実施するためには、試験科目の削減や試験時間の短縮が不可避となるが、その場合、試験としての選抜機能に疑問が生じ、受験者間に不公平感が醸成されるなどの事態に至るおそれがある。
(c) 現行司法試験よりも多数に上ると見込まれる論文式試験合格者に対し、更に口述試験を行えば、それだけ最終合格者の決定に期間を要することになる。
そのため、口述試験については、法科大学院において双方向的・多方向的な教育が行われること等にかんがみ、実施しないこととする。
公認会計士試験における口述試験の廃止理由は以下のように説明されている。
受験者数の増加については、社会人を含めた多様な人材にとっても受験しやすい試験制度への見直しが必要である。具体的には、現行、「3段階・5回」となっている試験体系を「1段階・2回」(短答式及び論文式試験)とするなど…試験制度の見直しを行うことが適切である。
(日本弁理士会の意見)
弁理士業務の質的充実を維持することを目的として、弁理士の実務能力である「知識にバックアップされた総合的判断を、品位をもって口頭で伝えるコミュニケーション能力」を考査するためには、下記のように簡素化するとしても口述試験が不可欠である。アンケート結果によっても、口述試験について、見直す必要はないとの回答が最も多く(問12:知財協47.2%、中小企業40.3%、弁理士57.6%)、口述試験自体の廃止などの外在的ニーズはない。
なお、弁理士試験に合格した後には、実務修習制度が用意されているが、実務修習が参入障壁とならないよう極めて短期間(72 時間)に限定されたものとされている上、受講した者は原則として全員を合格させる制度設計になっていることから、これを他士業のような口述試験の補完措置と同視することはできない。
さらに、司法試験は、口述試験が廃止された一方、法科大学院修了が司法試験の受験資格になり、公認会計士試験においても、現在三次試験(論述・口述)が廃止されたことを挙げ、弁理士試験においても口述試験の廃止が時代の流れであるかのように論じる声もある。しかし、弁理士と他資格とでは、登録に至るまでの制度設計がまったく異なっており、口述試験がないことだけを切り離して、その是非を検討することは適切ではない。司法試験には、経済的理由などにより法科大学院に通えない者のために設けられた司法試験予備試験では、口述試験が課されている。また、公認会計士試験は、2年以上の実務経験を要するほか、実務補習の修了考査が導入されている。加えて、税理士、社会保険労務士も口述試験がないが、受験資格が定められている。税理士は、実務経験も資格要件になっている。