こんばんは。
年末にひっそりと?、サトウ食品工業 vs 越後製菓の審決取消訴訟判決が出ていました。最初の侵害訴訟は一昨年、最高裁の不受理等で決着しましたが、その後、新たな損害賠償請求が提起されたため、特許が無効になれば、佐藤食品はその支払いを免れることになります。
佐藤食品が、以下の無効理由を主張して無効審判請求をしましたが全て退けられ、特許維持の審決がされたため、その取消訴訟を提起していました。
結果は全て請求棄却で、特許は維持されました。
佐藤食品側は、ずいぶんと沢山の無効理由を主張しています。
http://www.ip.courts.go.jp/search/jihp0030?hanreiid=83857
進歩性(発明の要旨認定,引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断),特許請求の範囲の記載要件,明細書の記載事項(明確性,実施可能要件),その他(発明未完成)
進歩性の欠如と明確性違反は良いとしても、実施可能要件違反と発明未完成は、ちょっと理解しがたい無効理由です。
ご存じの通り、越後製菓の特許は、餅の側面に切り込みを入れる発明です。クレームの記載からは、「側面に切り込みのある餅」、「側面にのみ切り込みのある餅」のどちらとも取れるため、地裁と高裁で判決も分かれました。そのため、明確性違反という無効理由は理解できます。
しかし、餅に切り込みを入れる発明が、当業者に実施不可能である、あるいは、未完成の発明とは思えません。
判決をまだ精査できていませんが、佐藤食品側は、人証だけでなく文献も含めて証拠を徹底的に集め、先行技術と大差ない発明であり進歩性違反であると、もっと主張すべきだったのではという気がします。佐藤食品側は知財慣れしていない感じもします。
佐藤食品は、最初の侵害訴訟途中で代理人を大手法律事務所へ変えましたが、今のところ上手く行っていないようです。
一方、越後製菓の弁護士さんは、知財訴訟経験豊富な方です。
弁護士や弁理士の仕事は、個人のスキルや能力に依存する面が強いです。大手事務所を使えば上手く行くかというと、必ずしもそうではないのでしょう。