地域団体商標制度が出来て、10年が経過しましたが、日経と紀伊民報に関連する記事が載っています。
日経では、地域団体商標は曲がり角を迎え、昨年施行の地理的表示制度により存在感が薄れていることを指摘しています。概ねその通りかと思います。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO10292360V01C16A2000000/
特許庁が10年前に創設した「地域団体商標制度」が曲がり角を迎えている。長崎カステラや琉球泡盛など地域の特産品を商標として使える制度で、登録件数は598件に増えたものの、ブランド価値の向上まで結びつけた例はわずか。農林水産省が昨年6月に似たような役割を持ちながら不正利用などへの罰則権限がより強い地理的表示保護制度(GI)を導入したことで、存在感が薄れている。今後それぞれの商標が10年間の登録期間の更新を迎える中で、登録件数が減少していく恐れもある。
紀伊日報では、知名度がそれほどではなく、売れていない商品を、地域団体商標登録したところで、売れるようになる訳ではなく、売り方や作り方を工夫していく必要があると指摘しています。
http://www.agara.co.jp/news/daily/?i=325443
県は、厳しい地域間競争の中で、差別化を図る上で重要な「地域ブランド」保護のため、制度の活用、周知を図っている。「有田みかん」「紀州備長炭」など知名度の高いブランドは保護の観点で登録効果は大きい。
ただ、地域ブランドは一定の知名度がある地域と、特徴のある商材がセットになることで成立する。売れていない特産品が急に「地域」を打ち出したブランドを名乗っても売れるわけではない。
商標法は、侵害者に対し、権利者が警告状を送ったり民事訴訟を提起して、侵害行為を中止させる制度です。
一方、地理的表示制度は、GIマークを表示する必要はあるものの、行政が模倣者を取り締まります。更新も不要です。
さらに、模倣されるほど有名な商品ならば、地域団体商標ではなく、3条2項の適用により、通常の商標権や団体商標を取得できるかもしれません。
単に地域の名称と商品の普通名称を組み合わせたものを地域団体商標登録したところで、26条で商標権の効力が及ばなかったり、32条の2は周知性を要件としませんので、先使用権が認められてしまう場合もあるでしょう。
これでは、刑事事件として、警察が取り締まることも難しいはずです。
登録料を20年、30年払い続けることも、中小の農協、漁協にとっては負担です。
地域団体商標制度が、そもそも地方の農協や漁協にとって、使いやすいものであったのか、見直す必要があるでしょう。