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Channel: 知的財産と調査
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AIの学習用データ、知財の「営業秘密」認定か

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日刊工業新聞が今朝、「AIの学習用データ、知財の「営業秘密」認定か−経産省が可能性議論」という記事をネットで配信しました。

http://www.nikkan.co.jp/articles/view/00397821

 

会員登録が必要なサイトのため、引用は最小限にしますが、「学習済みモデル」や学習用データは関数や数値であるため、特許権などには認められないものの、営業秘密として権利化されれば、学習済みモデルの開発が後押しされるという報道です。

 

また、モデルやデータに創作性が認められ、暗号化によってリバースエンジニアリングを制限するなど対応すれば、営業秘密の要件を満たす可能性があるとのことです。

 

しかし、報道が正確性を欠くように感じたので、経産省の元資料に当たってみました。

 

以下の産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会 分散戦略ワーキンググループ スライド73以降に「Ⅴ. 人工知能(AI)と知的財産について」が記載されています。

http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shojo/johokeizai/bunsan_senryaku_wg/pdf/007_02_00.pdf

 

 

営業秘密は権利化するものではなく、営業秘密が流出した場合に、その行為を規制したり損害賠償を請求できるというものです。不正競争防止法は知的財産法に含まれますが、特許権のような権利ではないので、営業秘密は知的財産「権」には含まれません。

 

そして、資料にあるように、営業秘密の3要件は、秘密管理性、有用性、非公知性です。創作性は要件になっていません。

そのため、適切に管理され、上記の3要件を満たせは、創作性のない生データであっても、不正競争防止法上の保護、救済を受けられます。

 

知的財産法を勉強した者にとっては、当たり前の結論でした。


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