昨日、東京オリンピックの佐野氏エンブレムについて、創作の修正経過が、新聞等で報道されました。
毎日新聞は、ベルギー劇場の代理人弁護士のコメントを載せています。
「あくまで現在のデザインの類似性が焦点だ。」
しかし、ちょっと待ってください。著作権は類似していれば侵害となるのでしょうか?
日本だけでなく、ベルギー、スイスとも著作権については、ベルヌ条約に加盟しています。ベルヌ条約は、著作権の無方式主義を定めています。
無方式主義とは、著作権の発生に登録を必要としないという意味です。登録、すなわち公示が不要ということは、他人の著作物を調べる公的な手段がないことを意味しています。
つまり、日本でもベルギーでもスイスでも、偶然似ていた著作物は、他人の著作権を侵害しません。これは著作権の教科書に必ず書かれている初歩的な話です。
今回の説明は、創作過程を説明することにより「依拠性」(模倣)を否定しています。法的には適切な説明です。
というよりも、そもそも、ベルギー劇場のエンブレムは、丸の中にZ型があるデザイン、佐野氏の五輪エンブレムは、東京のTをモチーフに日の丸とL字型を組み合わせたもので、両者は非類似です。
ベルギー劇場の代理人は、使用1回につき5万ユーロ(約670万円)という法外なライセンス料を求めています。やはり、目的はそこだったということです。使用1000回で67億円に上ります。
本来、佐野氏を守らなければならない日本のマスコミが、法律の不理解により大衆を扇動し、このような騒動に発展したことを、一日本人として非常に残念に思っています。
http://mainichi.jp/sports/news/20150829k0000e050227000c.html
2020年東京五輪の公式エンブレムが、ベルギー・リエージュ劇場のロゴと似ているとして同国で裁判になっている問題で、劇場側の弁護士が27日、毎日新聞に対し国際オリンピック委員会(IOC)本部のあるスイスでも提訴する用意があることを明らかにした。また、大会組織委がエンブレムの原案を公表したことについて「裁判には重要ではない」と述べ、あくまで現在のデザインの類似性が焦点だとの見解を示した。
劇場の代理人を務めるベレンブーム弁護士は27日、「どんな原案があったとしても、公式採用されたデザインが劇場ロゴの著作権を侵害していることが問題だ。裁判でも制作の経緯は重視されないだろう」と述べた。
劇場側は、差し止め要求をIOCが受け入れず、エンブレム使用を続けた場合、スポンサーが使った場合も含め、使用1回につき5万ユーロ(約670万円)支払うよう求めている。弁護士はこうした支払いに実効性を持たせるためスイスでの提訴を検討している。
http://www.hochi.co.jp/topics/20150829-OHT1T50067.html
デザイナーの佐野研二郎氏(43)が制作した2020年東京五輪の公式エンブレムが、ベルギーの劇場ロゴに似ていると指摘されている問題で、大会組織委員会は28日、都内で説明会を開き、コンペで選ばれた佐野氏の原案を初めて示した上で、盗用疑惑を改めて否定した。原案の類似作が見つかったため、佐野氏に2度も修正を要請して、現行デザインに決定していたことも公表。“次点”の繰り上げ当選などをせず、佐野氏デザインの採用にこだわり続けた経緯が、浮き彫りとなった。(江畑 康二郎)