こんにちは。
今週も意匠の調査をする機会がありました。開業してから、何度か意匠調査を請け負っています。
前職は大きい事務所で、部署が縦割りになっていましたので、意匠や商標の調査は担当することができませんでした。独立して、意匠調査など新たな業務にも取り組むことができています。
意匠の主要な検索項目は、意匠分類・Dターム、意匠に係る物品、権利者・出願人、登録日くらいしかありません。
また、日本の意匠登録出願は、特許出願の1/10程度で、かつ公開公報もありませんので、絞り込みで苦労することもあまりありません。
また、技術文書を読まなければならない特許に比べて、意匠は図面で判断するため、件数が同じでも調査にかかる時間は少なくて済みます。
では、意匠調査が特許調査よりも楽かと言えば、確かに検索や読み込みについてはそうだと思います。しかし、ある程度類似すると思われる意匠が見つかった場合の類否判断は、特許よりも難しく感じます。
意匠の要部は公知意匠との関係で変化しますので、後で別の公知意匠が見つかれば、意匠の骨格となる基本的態様も変わって来ます。
また、物品非類似でも、利用関係が成立したり、製品使用時に見えない部品については意匠権侵害とはならないなど、法的な論点もあります。
意匠には公開公報がなく、得られる情報量も限られます。かといって、公知意匠調査で特許庁が保管しているカタログまで調査しようとすると、かなりの時間がかかります。
さらに、特許の場合は研究開発の成果のため、公開公報が発行されてもすぐに実施化されるとは限りません。しかし、意匠は製品の外観のため、近いうちに実施される可能性が高いと言えます。そして、公報未発行出願に侵害可能性のある意匠が隠されている場合もあり、判断が難しい面もあります。
もっとも、意匠の審査は早くなっており、最近は半年程度で登録査定となるケースもあるようです。
意匠調査の結果、同一・類似の登録意匠が見つからなかったとしても、不正競争防止法第2条1項3号に規定される商品形態模倣行為に該当する場合もあり、その判断も求められます。
意匠調査は、突き詰めれば突き詰めるほど難しくなりますが、それ故、面白い仕事かもしれません。