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Channel: 知的財産と調査
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ASEAN諸国への事業進出とタイの知的財産事情

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こんばんは。以下の日経知財Awarenessの記事、非常に面白いですね。

実は、記事の高橋先生とはタイ研修でご一緒でした。


タイなど東南アジア諸国では、そもそも特許庁が公報等の電子データを、完全には保有していない場合も多々あります。

タイの場合、出願公開日も定まっていません。そのような状況では、収録率の高いデータベースなど望むべくもありません。


データベースのベンダーさんに対して、東南アジアの収録が良くないのはけしからんというようなことを言われる方もいますが、不十分でも調査ができるのだから良しと思うべきでしょう。


先日のINFOSTAセミナーでも、EPO職員から、東南アジア特許庁のデータには不足や誤りがあり、現状DOCDBへの収録率を上げることは、あまり考えていないという説明もありました。


新興国の特許調査は、複数のデータベースや現地代理人の調査結果と組み合わせるなど、調査にも工夫が必要ですが、逆に面白いとも言えます。


http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20131122.html

 今、東南アジア地域が従来の生産拠点に加えて、新たな消費市場、研究開発拠点として企業関係者の注目を集めている。中国依存へのリスクヘッジの側面もある。特に製造業にとっては現地での発明、共同開発、商品企画がこれまで以上に想定される中、健全な事業展開の前提として進出国市場での権利化は益々重要となってくる。中でもタイは、ASEAN10カ国の中でも古くから数多くの日系企業が進出し、直接投資額も大きい。日系企業の特許出願件数シェアも高いものの権利取得に向けては難題も多いという。タイ現地日系特許事務所のパイオニアで、タイをはじめ東南アジア地域の知的財産事情に詳しいS&I International Bangkok Office社長の井口雅文氏と、国内大手特許事務所、三好内外国特許事務所所長兼CEOの高橋俊一氏に、タイの知的財産制度の現状と実務上の注意点を聞いた。


高橋氏
 今年、タイを訪問し特許庁と知的財産裁判所を見学させてもらった。特許庁では審査の現場を見てきたが、一応、机にはパソコンは置いてあるものの書類が山積みになっており、書類のデータ化がなかなか進んでいないのが現状のようである。


井口氏
 タイにおける特許実務で特に注意したいことの一つに、出願した特許の公開日が予測不能な点が挙げられる。他国では法制度上、公開公報は出願日から18カ月(1年6カ月)後に発行されると明記されているが、タイの特許法には、公開公報は出願後に公開されるとのみ規定されており、特許庁からの通知もなく唐突に公開される。一方、審査請求期間は公開日から5年以内と規定されているので、公開日を見落としてしまったらその分時間ロスが生じて大変なことになる。日本企業は現地代理人と連携するなど常に公報をチェックしなくてはならない。


高橋氏
 出願と同時に審査請求ができない上、公開日も不明、さらに審査請求期間が非常に限られていることは実務上、とても不便であるが現状はどうしようもない。クライアント企業からもこの点について相談されるケースも多い。


http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20131125.html

井口氏


 タイの知的財産裁判所は1997年12月に設立された。正式名称は、「国際取引および知的財産裁判所」で、国際貿易関連の債権・債務処理と併せ、二つのグループに分かれている。二審制で、その上に最高裁判所がある。タイの知的財産裁判所には、年間5,000~7,000件の訴訟件数があるが、その殆どは刑事訴訟事件で、商標と著作権に関連した事件が多い(図1、図2、図3)。屋台を一斉に取り締まりして摘発した海賊版DVD、偽ブランド鞄の違法販売に関連した事件などである。特許関連の訴訟事件は例年20件ほどでこれも殆ど刑事訴訟事件である。民事訴訟だと時間と費用が掛かるわりには損害賠償金額も低い傾向にあるので、原告側はあまり利用しない。


高橋氏
 このケースもそうであるが、中国に進出した多くの日系企業が学んだ経験として、やはり「権利を持っていないと、ビジネスを有利に進めることができない、訴訟にも勝てない」ということだろう。権利を持ってないと無抵抗のまま現地企業にどんどん真似をされてしまう。そういう意味で、権利取得は東南アジア含め、海外ビジネスにおいて必須である。進出するすべての国でやみくもに出願するのは費用も手間もその分かかる。しかし、将来のリスクにも備え健全に事業展開を図るには出願せざるをえないことが多い。


井口氏
 タイで起こる知的財産訴訟事件は殆ど刑事事件だが、人材不足の問題もあり検察がきちんとマネジメントしてくれないケースが多いため、原告側が自身で証拠を十分に用意しなくてはならない。現地の優秀な弁護士と連携する必要もある。
 やはり、東南アジア含め海外で事業を展開するためには権利化していないと話しにならない。東南アジアでは日本企業が展開するビジネスにその国の法制度や実務の運用が追いついておらず、企業の知財部員が一生懸命対応している状況である。こうした状況の中でも企業がすべきことは、第一に権利化である。どこの市場でも、自社の技術、知的財産、ノウハウを自分たちで守ることを徹底することが重要である。


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